けいちつ
今年度は忙しく、特にこの冬は朝家を出て夜に帰ることがほとんどだった。
冬。寒くて暗くて、閉ざされた日々が、少し苦手だった。キリキリとした雪山の鋭さは好きなのだが、どうしても暗くなる気持ちがあった。
そうしてある日、実はそうであったかのように春が来るものだと思っていた。冬はその日のために耐え忍ぶものであると。
冬にも感情はあったことが、今年の冬でわかった事だった。
存在してくるだけで責め立てられるような寒さだけではなく、最近は少しだけ、成長を許してくれるような日の緩みを感じることが増えた。
起きた時に、外気の隔絶感が減っている時があった。素直にうれしい。
こうやって植物達の準備を後押ししているのか、と身をもって体感した冬だった。
春がやってくる。ざわざわする季節。全てを塗り替えてしまう季節。
春は全てをおぼろげにする。
自分の気持ちに鈍感な性分なので、思っていたことが、形にならない心のもやが、私の知りえない奥底に全て沈んでゆく。
そうして全部なかったことになる。
でも、何かの弾みで泥のような気持ちが溢れ出る時はある。沈んでいるだけで、確かに奥底には眠っているわけで。
全部の泥を掻き出すにはもう遅いし、怪物のようになってしまう気がして怖いから、せめて今覚えていることや感じていることを、あるべき形を与えてやりたいと思っている。
すぐにできないから難しいけれど、私のやっていることは、私の見たいものを見せてくれて、確かに私を救っているはずだから。
もっと自分を誇れる自分に、少しずつなれていると思える冬でもあった。いつかこの気持ちが、きれいな花になれますように。